2018年6月29日金曜日

 三羽のはげたか

このあたりのクリークでは水量の多いコヨーテクリーク。
それもそのはず、クリーク(灌漑用水路)とは名ばかりで、
れっきとした、河川なのです。

コヨーテクリークに沿って、トレイルが整備してあります。
このトレイル、サンノゼ市からモーガンヒル市まで伸びていて、
片道20マイル以上あります。往復すると。40マイル以上になって、これは約65KM
なので、そこそこの距離です。

自転車で往復する距離としては最適なのに、途中の風景はというと
カリフォルニアらしい荒野が広がるだけで、こだわりのマスターが
やっているカフェや、気の利いた古民家蕎麦屋で
休息というわけにはいきません。
コンビニや自販機すらないのです。

カフェなりレストランがトレイルの途中にないのが原因かどうか
不明ですが、このトレイル、利用者が極端に少ないのです。
立派な公園がこのトレイルの起点と終点にあるのですが、
トレイルを利用する人は本当にまばらです。

ちなみに、トレイルの終点にあるモーガンヒル市、とても小さい町なのですが
大手自転車メーカー2社、SpecializedとFoXが本社を置いてきます。
以外ですね。

さてそんな荒野が広がる、人っ子一人いないコヨーテクリークトレイル
を練習専用車として使っているTREKで、のんびりと流してきました。 
日が傾いてきて、なんだかイーグルスの楽曲に出てくるような
カリフォルニアの寂寥感に満ちた夕暮れ時。

ここからさらにちょっと南に下ると、
サリナスという名前の町に出ます。

サリナスは、あの「エデンの東」や
「怒りの葡萄」の作者で知られる、アメリカを代表する
小説家ジョン・スタインベック生誕の街です。

スタインベックの短編小説を読んでいると、
この近辺の風景や自然を描写したシーンが数多く出てきます。

そんなことを考えながら、自転車をこいでいると、
三羽のはげたかに遭遇しました。

はげたか三羽兄弟というかファミリーというか、
電柱の上で羽を休めて、こっちをじっとみています。
トレイルもこのあたりになると、人はやってこないから、
人間が珍しいのでしょうか。

写真に撮ると小さく見えますが、
実際に見ると大鷲のごとく大きいです。
羽を広げると、トレイルいっぱいに広がるから、
さしわたし2メートル近くあるでしょう。

はげたかは、元気に飛び回っている動物は
襲わないことになっています。
この辺は、うさぎや、へび、地りすに きつね、と
食べ物に事欠かないから、ここら一帯を
縄張りにしているのでしょう。

そういえば以前このトレイルを早朝に、
サンノゼからモーガンヒルまで自転車に乗った時のこと、
子狐が、自分の体長ほどもあるリスを咥えてトレイルを
とことこと歩いてました。

子狐のふさふさした尻尾と、リスのふさふさした尻尾の
2本の尻尾が揺れながら移動していて、最初は
何を見ているのか理解できませんでした。

はげたかはふくろうと違って、暗くなると、夜目が利かない
ということだから、たそがれ時は、こうやってじっとしているのでしょうか。

スタインベックの「赤い子馬」という短編小説に、
はげたかが出てきますね。

少年が熱心に世話をしていた子馬が病気になり、衰弱して、いよいよ自らの
死期を悟って馬小屋を抜け出して、草原に向かいます。
病気の子馬がある日突然馬小屋からいなくなって、少年は驚いて
探しに回ります。そうして、草原の遠く離れた上空を、はげたたかが旋回しているのを
発見するのです。

「赤い子馬」に登場するはげたかも、なるほどこんな大きいはげたかだったのだ・・・
などと勝手なことを想像しながら、夕暮れ時のスタインベックの世界を後にしたのでした。


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